かわいいペットたちは外国人?!
前回「犬のプロフェッショナル?!」でシーズー犬の特徴について少し触れましたが、もう少し掘り下げてみます。
シーズー犬はチベットのラサ・アプソと云う犬が起源で、そのほとんどの特徴を受け継いでいます。
高山気候で低温低湿度(平均湿度35%の乾燥地帯)で育まれたラサ・アプソは、その乾燥から皮膚を守るために日本犬の柴犬の約5倍も皮脂腺が発達している、脂性の犬であることは前回も書きました。
そして日本には梅雨と云う高温高湿度(最大湿度95%にもなる)の季節があり、 その特徴がアダになるわけです。 こういった動物の身体的特徴は環境に合わせてすぐに進化するわけもなく、1万年~10万年単位の長い年月がかかるのは言うまでもありません。
シーズーにしてもラサ・アプソから特別進化しているわけではなく、単にチベットから連れてこられてわずか400年程度しか経っていないわけです。そして飼育されるのが日本で、高温高多湿の梅雨に何ら対策を施されないのではたまったものではないのです。
「〇〇ちゃん良い子にしててね~」
「今日はみんなで出かけるからお留守番よ」
「いたずらしないでね~!」
こんな感じで 留守番を言いつけ、電気を消してエアコンまでスイッチを切る。
残されたシーズー君はさみしいのは当然なのですが、エアコンを切られた室内はどんどん室温や湿度が上がっていき、 高山気候に対応するために体の表面にたっぷりある皮脂は室内の90%を超えるような高湿度に当たって乳化(ゆるくなります)していきます。
そしてゆるくなった皮脂は長時間のうちに徐々に垂れ下がりお腹付近に溜まっていきます。
そうすると今度はお腹付近の皮膚の皮膚呼吸がスムーズに行われにくくなり弱ってしまいます。
弱くなった皮膚は雑菌等の格好の標的になり、特に人のからだや犬の体に普遍的に存在する酵母菌の一種であるマラセチア菌などは脂質と高湿度が大好きですから大増殖し、結果的に皮膚炎を発症させたりします。
これがシーズーのウィークポイントのひとつですが、彼らが日本の気候に合わない理由は他にもまだあります。
あなたのワンちゃんは換毛種ですか?
注意すべきは被毛の特徴です。
「換毛種」という言い方が有りますが、夏毛と冬毛が生え変わる種類のことです。
日本には春夏秋冬という特徴的な四季があり、夏と冬の温度差や湿度差には激しいものがあります。
したがって日本に古来より存在するイヌ科の動物(イヌ科の動物は汗腺を持たない)のほとんどは「換毛」します。これは他の動物でも見られますが、皮膚に汗腺を持たない(汗をかくことによって温度調節が出来ない)イヌ科の動物が、日本で暮らしていくための知恵ともいえるでしょう。
例えば柴犬は4月の終わり頃からアンダーコート(冬毛、下毛)が抜け始め、全部とっておけばダンボール箱一杯ほども抜けます。そして秋も深まれば寒い冬に備えてまた徐々にアンダーコートが増え始めます。
要するに冬服と夏服を季節によって衣替えしているわけです。
衣替えすることによって、結果的に温度調節湿度調節をしているわけです。
したがってシーズーを初めとした非換毛犬は梅雨、夏場対策が必須となります。
ちょっと想像してみてください。
梅雨の真っただ中で、エアコンを消して一日中セーターとダウンコートを着ているあなた自身を。
病気にならない訳がない・・・。
さあ、すこしお分かり頂けたでしょうか。
「犬のプロフェッショナル?!」で述べたように、お魚さんや小動物では産地の気候と同じ環境で飼育するようにたいていのショップでは教えてくれます。
しかしこと犬や猫になると、このことがほとんど取り沙汰されないから大変なのです。
こういったことが繁殖家や販売者の間で真剣に研究されていない背景は、商業的問題ではなく、基本的な動物学の認識度が低いことからきているのでしょう。
お魚さんや小動物では環境に配慮しないと商業的に問題が起きるのです。
温度ひとつ間違えれば、湿度一つ間違えれば、PHひとつ間違えれば、仕入れた商品(動物)が死んでしまうからこそ発達した飼育理論や管理技術が根底にあるわけです。
そして一方の犬猫はというと、そこそこの体格を持つ哺乳類であるがために、少々環境が合わなくてもすぐに死に至ることは有りません。
だから結果的に種の持つウィークポイントがどうしてもおざなりになり、種が持つ「質」が原因とも認知し得ないまま、主に皮膚疾患に始まる数々の疾病に悩まされるワンコ達が増えていくわけです。
大事な家族の一員の特徴を知る事はとても大事なことです。
美しく健やかで楽しいペット生活を実現させるために、もっともっと一緒に勉強をしていきましょう。
次回はこの続きで、他の人気犬種も取り上げていきます。
我が家のワンコはもうすぐ13歳のおばあちゃんコーギーですが、少しでも長生きしてもらいたいので、日頃のケアについてすごく興味があります。
大半のペットショップは、商品を売るための知識はありますが、フードやケア製品の効能の根拠までは知る由もなく、動物病院は医学的根拠に基づく治療や予防のアドバイスはしてくれても、日常のケア、例えば適切なブラッシングの方法等なんかは以外と無知だったりします。
これからも大切な家族の為の貴重な記事を楽しみにしております。