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犬猫と環境の話

6〜8月の日本は亜熱帯気候

例えば、シーズーのDNAはチベットのラサ・アプソである。

チベットは年間平均湿度が35%と非常に低く40%を超える事すらほとんどない高山気候の土地柄である。
したがってラサ・アプソは自分の皮膚を乾燥から守るために皮脂腺がとても発達した犬であり、そのDNAを受け継ぐシーズーも全く同じであり、柴犬のおよそ5倍もの皮脂腺を持つ。

つまるところシーズー高湿度に非常に弱く、梅雨から夏にかけて腹部の皮膚を中心とした皮膚炎をとても起こしやすいので室内の湿度調整が欠かせ無い犬種であるのだ。

しかしながらペット業界でこういう犬猫の原産地気候に由来する基本的身体構造に関するケア論はほとんど取り沙汰されず、しかも日本の5〜10月に掛けての気候はほぼ亜熱帯気候と同等である事や、湿度が90%を超える事はザラである事すら認識が持たれていない。

セミナーを開催した折にいつもぶつけるのだが「日本の最高湿度がどれ位になると思うか?」と受講者に質問すると、概ね90%の受講者が「65%くらいですか?」と応える。

先月からの東北地方のショップセミナー巡りで、同じ質問をし、5月中旬であった当日のその地(山形)の湿度が92%もある事を示すと一様に驚いていた。

こういった事は観賞魚や小動物(両生類や爬虫類など)管理の世界では比較的常識であるのに、なぜか犬猫となると全く取り沙汰されないのが現状なのである。

犬のプロフェッショナル?!

もっと知識を!


私がペットビジネスに参加して約10年が経過しましたが、各地のペットショップへボディケアセミナーで訪れるごとにある事実に気づき始めました。


それは誤解を恐れず簡潔にいうとこうなります


◆アクア(魚)や小動物担当者は専門知識を有している場合が多いのに比べ、犬猫担当者の生体に関する知識は非常に低い

 
もちろん犬猫担当者も、トイレのしつけやワクチン接種や成長に合わせた外出可能時期など、一般的な飼育スタートアップ時の注意事項はキッチリと説明できるレベルでは有るのですが、私が言うところの専門知識はもっと根源的な「命の仕組み」に関わることなのです。





もっとわかりやすく説明します。
小動物で例えると分かりやすいのです。

例えばヤドクガエルを購入すると担当者は生体の特徴を説明し、それに伴う必要な知識や必要な用具などを以下のようにキチッと説明してくれます。


ヤドクガエル飼育に必要な4つの条件 「気温、湿度、土、水、」
 

 

ヤドクガエルの生息地は中米コスタリカから南米大陸アマゾン川流域ですから、必要な気温は熱帯魚などと同様27度前後です。日本で飼育するには晩夏から梅雨明けまでの期間にヒーターで保温する必要があります。


湿度

 

ヤドクガエルの皮膚は乾燥にあまり耐えられないので人工的に湿度を70%以上にします。たとえば70から80%に設定するには細かく調整しなければなりませんが、70%以上なら100%でもOKです、これなら簡単ですね。部屋が乾燥気味だと大変ですが、熱帯魚の水槽や観葉植物があれば部屋全体の湿度が高く好都合。


土などの底床材

 

底床材はとても重要です、土に中にはたくさんのバクテリアが棲み排泄物を分解し植物が吸収できるようにしてくれます。バクテリアの棲みにくい環境ではアンモニアが発生しヤドクガエルに有害です。




例えばエビ類のビーシュリンプではこう説明してくれます。


■保温・冷却器具  
ヒーターとサーモスタットは通常の熱帯魚用で問題ありません。水温を上げることより、下げる事のほうが大事です。特に夏場は水温28度から30度を越えると全滅の可能性が高くなります
冷却ファンで27度くらいに下がれば良いのですが、アパートや昼間締め切った家だとクーラーが必要になってくると思います。

①水温 22~24度が最適です。活動範囲は17~28度くらい、生存レベルは13~30度くらいです。
28度を超える環境が続くと次々と死亡します。
また、温度変化が激しい環境だと、死亡する個体が増えたり、脱卵する個体も増えます。

②PH(ペーハー)  弱酸性(PH 6.6~6.8)くらいが理想です。
ソイルを使っていれば、エビに適したPHに保ってくれますので、あまり気にしなくても大丈夫です 

種別ごとの特徴を知ろう


一方、犬猫の方はどうかというと、先に述べたように一般知識の範疇に近いことのみであり、種別に関わる生体科学的特徴について語られることは非常に少なく、結局そういった点で飼育法や注意事項を購入時に受けることは稀であるのが現状です。

しかし犬も猫もカエルやエビと同じ動物。
生息環境から生まれた特徴特性を知ることは飼育に必須の知識的条件であるはずなのです。

例えばシーズーを例にとってみます。
このワンちゃんはチベットのラサ・アプソという、イヌ科としても出現の歴史が非常に長い古代種であり、シーズーはDNAのほとんどがラサ・アプソなのです。ペキニーズとの混血という意見を否定する研究者もいます。

したがってシーズーは、「チベットの哺乳類」であるラサ・アプソの特徴を色濃く受け継いでいるといえます。どういう特徴を持つかというとチベットの気候、生息環境を考えれば答えは出ます。

チベットは高地寒冷乾燥地帯で山岳気候です。年間平均湿度がなんと35%前後という極度に湿度の低い場所なのです。こういった気候下で育まれたDNAは日常的な乾燥から皮膚を守るべく、皮脂腺を発達させるのです。日本犬の柴犬と比較すると、シーズーは約3倍から5倍皮脂腺が多いのです。要するに非常に脂性の犬だということがいえます。



さて、そこで考えねばならないのは今度は我々の住む日本の地域的気候条件です。
日本は基本的に亜熱帯気候エリアに属す高温多湿の国です。四季の誤差こそあれ、日本は現在梅雨というまさに高温高湿度期の真っ最中です。最高湿度はナント90%以上にも上ります。

こういう環境でシーズーを飼育するとなると、本来ヤドクガエルの例のように湿度や温度管理に充分注意を払う必要があるのですが、購入時にそれをきちんと教えてくれるショップは稀だというのが現実なのです。梅雨場、夏場などにシーズーをお留守番させる場合はエアコンでの温度、湿度調整は必須であるはずですが、知らないわけですから配慮が行き届くわけもなく、シーズーは高温多湿にさらされ、室内の90%を超えるような湿度によって皮膚表面の皮脂は乳化してゆるくなり、お腹の方へ垂れ下がって溜まり、背中の皮脂は少なくなって、背中カサカサお腹ダバダバという状態になるわけです。



私はトリマーさんの集まりや、トリミングショップでセミナーを行う際に必ず次の質問をすることにしています。

「梅雨や夏場に、お腹の皮膚が赤くただれたり臭くなったりしやすい犬種はなんですか?」

今まで恐らく100箇所くらいでこの質問をしていますが、トリマーさんの答えはいつも同じで、80%位のトリマーさんが「シーズーです」と答えます。それくらい顕著に日本で飼育されているシーズーには環境調整の不備が原因の皮膚疾患や不調にさらされているのです。





大事な家族の一員に見合った生活環境を考え直しましょう



ほんの一例を挙げてみましたが、日本でのペット飼育に関する必須の基本的知識のなかでも、とりわけ犬に関する情報の少なさと意識の低さは実に問題を含んでいるのです。

そしてこれらは犬猫生体販売業者のみならず、シャンプー、消臭剤、除菌剤、防虫剤、口腔ケア剤、耳垢洗浄剤、涙やけ除去剤など、ボディケア用品を製造しているメーカーにも共通の意識の低さ稚拙さが見て取れます。
注意深く見てみると、犬や猫の、その種の起源や特質にまで及んで製品作りを行なっているメーカーは悲しいことにほとんど見当たりません。

アクアや小動物では当たり前になっている事柄が、犬や猫では全くなされていないというのが現状なのです。



ペットビジネス従事者は当然のこと、飼育者もこの問題にはもっと深く傾注するべきと私は思います。



上記のシーズーはあくまで一例に過ぎません。

例えば、日本には従来から「耳の垂れた哺乳類」は居ません。 

「顔の皮膚等に深い シワがある哺乳類」も居ません。
 

しかし「夏毛、冬毛と季節に応じて換毛する哺乳類」は居ます。


なぜでしょう・・・。

そうです。日本の自然環境が耳が垂れることや、シワをたくさん作ることや、換毛しない種の存続を許さないからです。気候風土に合わない形、種はとっくの大昔に淘汰されて滅びてしまっているからです。

基本は高温多湿の亜熱帯気候なのです。
しかし四季があり、通常の亜熱帯地域とは違い、氷点下にも至る冬までがやってくるという、季節に非常に落差のある環境なのです。


そして、ペットショップで販売されている犬猫の90%は、日本と違う気候の下で育まれた「形」、言い換えれば「外国人」なのです・・・。





犬猫は人のように自分で服を脱いだり着たりエアコンのスイッチを入れるなど、温度や湿度調整が出来ませんし、それを訴えることもできません。

私達はこの不条理を是正しなければなりません。
命を差別してはいけませんが、数多くのペットの中でも犬や猫は今や家族同様、我が子同様に扱われている現在、あまりにもその命に関して不勉強であり努力をしていないといわざるを得ません。







犬猫を取り巻く法的環境なども変わりつつある今、売る側も作る側も飼う側も意識の転換期に来ていると思います。





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